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いつになったら娘が元通りに元気になるのか想像もつかなかった。
一旦ハワイに戻って荷物をまとめ、再び娘の元へと舞い戻り、今度は病院の近くにアパートを借りて通い詰めた。顔を見つめて泣いているだけで何もできない自分が悲しかった。 ある日の朝、ニュース番組を流しっ放しにしたまま、いつものように病院へ行く準備をしていたところ、たった数分間のあるニュースだけがストレートに耳に飛び込んできた。小さなお子さんが風邪を引き、そのときに施された注射で発作を起こし他界してしまった、これは完全な医療ミスである、という内容のニュースだった。 母親は、化粧もせず、着の身着のままの状態で娘の病院に飛び込み、担当医師に聞いた。『今ニュースで見たんですが、これですよね?この子と同じ種類の注射だったんですよね?!』 『はぁ?なんのことですか?それ見てましたけどそんなニュースありませんでしたよねえ?』と、1人の看護婦が何食わぬ顔で医師と話していたシーンを今でも忘れられないという。 結局、ティファニーの昏睡状態は1ヶ月にも及び、最終的には、母親とも誰とも一度も会話できないままに他界してしまった。 その後、息子は銀行の仕事を辞めて空港に転職。万が一、ティファニーが帰ってきたら一番に迎えてあげられる場所だから、という理由で。次女も同じような気持ちで転職し、現在の場所に勤めている。人生観も生き方も、何もかもがティファニーの生前とは変わった。 母親に関しては、医師に対して起訴を起こした。それは9年間に及び、今も解決していない。 『運が悪かったんだよ。早く忘れて元気にならなきゃ。』 『裁判にかけても医師は自分の過失を認めないと思うよ。辛くなるだけだからやめなさい。』と、これまでいろんな声をかけてもらった。それでも納得できなかった。お金が欲しいんじゃない、とにかく医師に認めて謝ってもらわないとティファニーが浮かばれないじゃない、ということだった。 そう、よくある話である。事件としても割と多い話で、起訴する側の親の思いもいつも同じだ。 娘が可哀想でねぇ・・・と言いながらも一糸の涙も流さず、始終変わらない表情で淡々とあたしに語りかける母親の顔を見ながら、この人はこの9年間に一体どれほどの涙を流したのだろう?と思うと、あたしは心の中で静かに泣いた。その明るい表情が涙でぐしゃぐしゃになっている顔だって想像できたし、単調な喋りの裏の悲痛な心の叫びも胸に届いた。 彼女が話し始めてから3時間、あたしは一言も何も意見せずひたすら聞いていた。 ・・・続く・・・
by mako_hawaii
| 2004-12-06 09:52
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